オフィスの原状回復工事の適正範囲は?払い過ぎないための注意
オフィスを移転する際には、契約によって借りる前の状態に戻す原状回復工事が義務付けられていることが多いでしょう。
しかしそれはどこまでの範囲なのか、工事の範囲について貸主と借主側で認識が違っているとトラブルになりかねません。
一般の住宅とオフィスとでは原状回復の定義も違うので、借主としてどこまで負担するべきなのか、適正な範囲を知っておくことが大切です。
その上で借主と交渉し、適切な範囲での納得のいく費用負担にしたいものです。
オフィスの原状回復工事に含まれる範囲
オフィスの原状回復工事は、基本的には借りた側が100%負担します。
新しく作ったものは撤去し、使う前のきれいな状態に戻すのが基本です。
新しいオフィスに入居するときにも工事を行なっていますが、原状回復工事はこのときのB工事に該当する箇所が多いです。
基本的な範囲
原状回復工事が行われる主な箇所は以下の通りです。
- 壁:クロスの張替え
- 床:カーペットやタイルの張替え、巾木の張替え
- 天井:塗装
- 設備工事:電気、水道、ガス、電話回線
- 看板の撤去
- 仕切りなど増設したものの撤去
- 照明器具(入居時のものと違う場合)
- クリーニング
- 産業廃棄物の処理
細かいところは契約書の内容次第で変わってきますが、およそこのような部分の工事が必要になります。
資産として利用してもらうことも提案
借主側で増設した設備は原則として借主側の負担で撤去します。
しかし設備としては残す価値のあるものもあるかもしれません。
原状回復行為には含まれない範囲
では、原状回復工事でやらなくてもいい部分はどこでしょうか。これを知っておかないと、余計な工事費を支払うはめになるかもしれません。
原状回復工事の見積もりが出てきたら、これらの部分が含まれていないかしっかりとチェックしてください。
通常損耗の範囲
一般の賃貸住宅と違い、オフィスの場合は通常損耗や経年劣化による修繕費も基本的には借主側が負担することとなっています。
その理由は、業種によってどの程度設備が損耗、劣化するかがわからないからです。
一般の賃貸住宅であれば経年劣化分はおよそ予測がつくので、その分が家賃に含まれています。
しかしオフィスの場合はそれを事前に組み込むことが難しいため、基本的には借主負担となっているのです。
また、設備の耐用年数も考慮されなくてはなりません。
例えばある設備に関して、耐用年数が6年となっている場合、6年経てば資産としての価値はなくなります。それを新品に交換するというのは、明らかに過剰な負担になります。
共有部分の工事
オフィスの内部は原則として借主が負担するとしても、ビルの共有部分については貸主の負担で修繕すべきところです。
- 玄関ホール
- エレベーター
- 階段
- トイレ
などの誰もが使うところです。
専有部分以外のところが見積もりに紛れ込んでいないか、しっかりチェックしてください!
全面の修繕
壁や天井など、破損している部分があれば当然修繕しなくてはなりませんが、本来はその部分だけ直せば済むことです。
しかし見積書をよく見ると、全面修繕になっていることがあります。
グレードアップの修繕
原状回復というのは、入居する前の状態に戻すことであって、それ以上でもそれ以下でもないのです。
必要以上にグレードアップするような工事の費用まで借主が負担するのはおかしな話です。
入居前よりも質の良い設備にしようとグレードアップした分まで含んで見積書を出される場合があるので、注意してください。
一般の住宅とは違うということを認識しておくこと
賃貸物件については、国土交通省が原状回復についてのガイドラインを定めています。
しかしこれは一般の賃貸住宅であって、賃貸オフィスには基本的には適用されないものです。
契約書の特約に注意
特に何も取り決めがない場合、原則として借主の負担で原状回復を行いますが、経年劣化や通常損耗の範囲は貸主の負担になります。
しかし「経年劣化部分も原状回復工事に含める」などの特約があった場合は、すべて借主の負担で工事を行います。
契約書に明記してあり、署名・捺印されている場合、後から何を言ってもどうにもなりません。その契約に納得して同意しているということになるからです。
原状回復の特約についてはそれで本当に良いか、特によくみてください。
入居時の対応がポイント
退去時のトラブルを防ぐためには、入居時の対応がとても大切です。
できれば写真など証拠を残しておき、経年劣化なのか借主側の責任による損傷なのかわかるようにしておきます。
記録をしっかり残しておけば、原状回復工事の費用を少しでも抑えられる可能性があります。
原状回復工事について工事の前に貸主と交渉することが大事
原状回復工事については原則として契約書に書かれている通りに進めなくてはいけません。
しかし、契約時にはわからなかったこと、後から新たな設備を導入するなどした時に、どこまで自分たちが負担すればいいのかわからないことも出てきます。
その時に勝手に工事を進めてしまうと後でトラブルになる可能性があるので、工事を始める前にどこまでがどちらの負担なのかをしっかり話し合い、交渉によって減額できるところは粘り強く交渉していきましょう。