知っておくべき、オフィスのレイアウトに関わる消防法の知識
オフィスレイアウトを考える際に外せないのが法令の遵守です。法令を守ったレイアウトにしないと違法建築物となってしまい、「知らなかった」では済まされません。
そのうちの一つ、消防法について解説します。消防法は火事が起きたときに従業員の命を守るための法令ですから、基礎知識は押さえておきたいところです。
オフィスレイアウトを考えるときにどこに気をつけなければいけないのか、今一度見直してみましょう。
万が一、今のオフィスが法令に違反していないかどうかも合わせてご確認ください。
オフィスレイアウトを考えるときに忘れてはならない消防法とは
消防法とは、火事に備えるための法律です。
オフィスではたくさんの人が働いているので、火事が広がらないようにすることと、避難経路を確保するための対策が義務付けられています。
設置が義務付けられているもの
消防法では、次の4つの設備が義務付けられています。
- 消火設備:消化器、スプリンクラーなど
- 警報設備:火災報知器など
- 避難設備:誘導灯、非常階段など
- 消防活動用設備:排煙設備、連結送水管など
これらが設置されていないオフィス、ビルは違法となります。
防火管理者を決める
消防法は、防火管理者の選任についても定めています。ただ、すべての事業所に必要かというとそうではなくて、
- 飲食店、店舗などの特定用途の防火対象物:収容人数30人以上
- 共同住宅、事務所など非特定用途の防火対象物:収容人数50人以上
防火管理者は、
- 強い責任感と実行力を兼ね備えている
- 管理的または監督的な地位にある
人を選任することになっています。
また、
- 消防計画の作成、届け出
- 避難訓練の実施
- 消防用設備の点検、整備
などの業務を行う責任があります。
消防計画の作成
消防計画とはどのようなものなのか、例としては
- 放火防止対策
- 防災教育
- 消防訓練
- 消防設備の点検、整備
- 営業時間外の防火管理体制
などについて計画を立てます。
火事が起きないように、また、火事が起きてしまったときに被害を最小限に食い止めるための方策を立てる必要があるのです。
オフィスレイアウトと消防法の関係で気をつけるべきこと
では、オフィスのレイアウトで気をつけるべきことはどのようなことでしょうか。
問題になるのは、パーテーションなどで区切って部屋を増やしたときです。
パーテーション
消防法によって、執務室の中などにスプリンクラーや火災報知器などを設置することが義務付けられています。
オフィスレイアウトを変更するときに、大規模な工事は費用がかかるので、パーテーションで区切る場合があるでしょう。
その時のパーテーションの高さが問題になります。
そうなると、消防署への届出が必要となり、新しい部屋にはスプリンクラーなどの消火設備が必要となるのです。
入居する前はもちろん、入居後にレイアウトを変える場合も同様です。
火災報知器
火災報知器は各部屋への設置が義務付けられています。パーテーションで区切って部屋を増やせば当然増設しなくてはなりません。
消防設備
消防設備とは、スプリンクラーなど火災が起きた場合に消火をするための設備です。これも部屋ごとに必要になります。
排煙設備
消防法では床面積500㎡ごとに配線設備が必要とされています。排煙口が直接外気と接することができる自然排煙設備か、機械的に排煙するかのどちらかの設備が必要となります。
建築基準法による設置基準もあるため、どちらの法律も満たすような設置方法を考えますが、ここは専門家に任せた方が良さそうです。
避難経路の確保
オフィスの廊下幅については建築基準法による基準がありますが、消防法では「実際に避難ができるか」というところも見なくてはいけません。
事務所移転時の届け出
事務所を移転する際には、防火管理者の変更届を提出する必要があります。
移転先、移転元、どちらにも届出をします。資格は講習を受けることで取得できますが、通常は管理職の立場にある人が選任されます。
選任と同時に消防計画の提出なども必要になってくるので、移転のごたごたで忘れないようにしたいものです。
時々所轄の消防署の指導がある
避難経路は確保できているか、スプリンクラーなどはきちんと設定されているかなど、法律に違反していないかどうかを確認したり、他に何か問題がないかということを確認するため、時折消防署の立入検査があります。
問題があれば指導が入るので、その指導には従わないといけません。万が一の時に従業員の命を守るためです。
あなたのオフィスは大丈夫?法令違反になるオフィスレイアウト
今のオフィスは法律に違反していないでしょうか。今一度見直してみましょう。
廊下の幅が足りない
パーテーションを建てたはいいが、廊下の幅が狭くなってしまったということのないように気をつけたいものです。
- 廊下の片側のみに部屋がある:1.2m以上
- 廊下の両側に部屋がある:1.6m以上
この幅がないと建築基準法違反となりますし、これ以上の幅を確保しても備品などを置いて廊下の幅が狭くなったら消防法に違反します。
間仕切りを立てたのに消火設備を作っていない
天井まで届かないタイプの間仕切りなら良いのですが、きっちりと「部屋」を作ってしまった場合には、消防設備、排煙設備を再度確認してください。
なければ違法になります。
増設によって排煙窓がなくなった
部屋を区切ったことにより、排煙窓のない部屋ができてしまった場合はそれも違法になります。排煙設備を作ることが難しい場合は、完全な部屋にしないことです。
消防法は人の命に関わること。遵守しよう
パーテーションでちょっと区切っただけだから大丈夫、という安易な気持ちは捨てましょう。法律で定めていることには意味がありますし、何より人の命に関わることです。
火災報知器やスプリンクラーによって火災が起きても被害を広げないということにもなるので、法令はきちんと守り、従業員の安全を確保するようにしてください。