オフィスの防火区画とは?火災を防ぐために知っておきたいルール
オフィス物件は一般の住宅とは違い、様々な法律が適用されます。その一つが建築基準法で、オフィスには防火区画を設けなければなりません。
防火区画は火事を防ぐためであり、また、万が一火事が起きてしまった時に被害をできるだけ抑えるために必要なものです。
大きなオフィスほど家事が起きた時に被害が大きくなる可能性があるので、人の命を守るためにも法律を遵守してもらいたいです。
どのくらいの広さについてどのように区画を設けるのか、例外になる規定はないのか、オフィスの防火区画の基本について解説します。
オフィスの防火区画の目的は広がるのを防ぐこと
防火区画という言葉は、一般の従業員ではあまり聞いたことがない言葉かもしれません。
法令で規定されているもので、建物の火災が拡大しないように設けられた区画のことです。
- 火災がその区画内で収まること
- 周りに広がらないこと
を目的として作られており、消火や救助活動を円滑に行うという目的もあります。
防火区画は建築基準法施工例に規定されている
防火区画は建築基準法施工令第112条に規定されています。さらに第1項〜第16項まであり、その中で3つの防火区画が定められています。
- 面積区画(第1項〜第4項、第5項〜第8項は高層面積区画)
- 竪穴区画(第9項)
- 異種用途区画(第12項〜第13項)
の3つです。
外壁の条件
防火区画は建物の中の条件ですが、外壁にも条件が付されます。
防火区画に接する外壁には、
- 90cm以上の準耐火構造
- 50cm以上の準大会構造の袖壁
のどちらかが必要になります。
袖壁とは、壁に対して直角に張り出している壁のことで、柱の脇の壁やベランダの方に突き出ている壁のことを言います。
防火区画:面積区画の種類(第1項〜第8項)
防火区画の面積区画については、広さと高さによって基準が変わってきます。
1500㎡を超える面積区画
まず、延べ面積が1500㎡を超えるものが対象となります。1500㎡ごとに、
- 1時間準耐火基準に適合する壁と床
- 特定防火設備
を備えて区画する必要があります。
特定防火設備とは防火扉など1時間の耐火性のある設備のことです。
延べ面積が500㎡を超える場合
第2項では延べ面積が500㎡を超えるものについての規定があります。
- 避難時間が短い建物
- 準耐火建築物となっているもの
については500㎡ごとに区画をします。
準耐火建築物とは、
- 壁
- 床
- 柱
などの建築物の構造部分が準耐火性能を持っている(30〜45分燃えるのを防ぐことができる)建物です。
高層区画
建物が11階以上になると、100㎡ごとに防火区画を設定しなければならなくなります。これを高層区画といいます。
ただし、天井の仕上げ材、下地を
- 準不燃材料にすると200㎡ごと
- 不燃材料にすれば500㎡ごと
という緩和条件もあります。
また、スプリンクラーを設置すれば、上記の防火区画がそれぞれ2倍になります。
- 200㎡→400㎡
- 500㎡→1000㎡
面積区画の免除規定を知っておこう
面積区画の基本は上記で説明した通りですが、区画についての免除規定もあるのです。
この条件を知っておけば面積区画が広がりますから、オフィスのレイアウト設計、内装工事に影響してくるでしょう。
スプリンクラーを設置する
高層区画のところでも少しお話ししましたが、スプリンクラーなどの自動消火設備を設置することで面積区画を2倍にすることができます。
消火器など手動のもののではダメなので、注意してください。
階段やエレベーターなどは対象外
防火区画に含まれるのは、基本的に壁と床で囲まれた空間であり、
- 階段
- エレベーター
などは免除されています。
用途によっても免除される
通常のオフィスにはあまりないかもしれませんが、
- 体育館
- 映画館
- 冷蔵品を保管している倉庫
- 不燃性の品物を補完する立体的な倉庫
- 仲買い売場等の市場
などは「やむを得ない場合において面積区画が免除される」という規定に該当する場合があります。
防火区画:竪穴区画(第9項)
面積に対する規定の他に、空間に関する規定もあります。それが竪穴区画です。
竪穴とはどのような空間か
竪穴区画とは
- 主要構造部分が耐火構造または準耐火構造であること
- 地階または3階以上の階に居室を有するオフィスの吹き抜け、階段、エレベーターシャフト、ダクトスペース等
このような垂直方向に連続している空間のことを指します。
メゾネット型のオフィスなど複数階に渡って空間が連続している場合、と考えてもらえばわかりやすいと思います。屋外階段なども含まれます。
空間が縦に連続していると火や煙が上っていきやすく、被害が拡大する恐れがあるためです。
このような空間は不燃材料で作ることが必要であり、
- 一戸建て住宅は階数が3以下で延べ面積が200㎡以内
- 共同住宅は住戸の階数が3以下で床面積の合計が200㎡以内
という条件のもと、防火区画を設置しなくてはなりません。
竪穴区画の免除規定
竪穴区画にも免除規定があります。
面積区画の免除要件と同じく、劇場や体育館など用途上やむを得ない場合には区画が緩和されます。
防火区画:異種用防火区画(第12項〜第13項)
最後は異種用途防火区画です。
異種用途とは、読んで字のごとくで、一つの建物に用途の違う区画が複数存在しているような状態のことです。
このようなビルですと、火を使っている店舗から火災が発生する事態も想定されますから、被害を最小限に食い止めるために異種用途の空間をしっかりと区画していかなくてはいけないのです。
- 学校、劇場、映画館、演芸場など
- 公会堂、集会場
- マーケット
- 公衆浴場
- 自動車倉庫(床面積の合計が50㎡以上)
- 百貨店
- 共同住宅、寄宿舎、病院など(床面積の合計が200㎡以上)
などの建物が該当します。
スパンドレル等が不要
スパンドレルとは建築用語でカーテンウォール構法のことを指します。窓の上下の部分の壁のパネルのことです。
面積区画と竪穴区画では、外壁には90cm以上の準耐火構造が必要でしたが、異種用途区画ではこれが不要になります。
防火区画をしっかり理解して法令違反のないように!
防火区画は普段あまりなじみのない言葉ですが、法令違反にならないようにするのはもちろん大事ですし、何よりも人命に関わることなので、知らなかったでは済まされないですね。
わからないこと、不明なことは専門家に聞きつつ、火災を防ぐための対策をしっかりと立てていきましょう。